バイアスにアンバイアス、CPUやGPUなど、20種類を超えるレンダラー

レンダラーの種類

CGの表現や生産性などに大きく影響するレンダラーについて紹介します。

ワンコ先生

今回はレンダラーの紹介じゃ。最近は様々なレンダラーが開発されておるのう。
種類が多すぎて、どんなレンダラーがあるのか把握しきれません。

菊千代

ワンコ先生

本当にそのとおりじゃのう。今回はレンダラーの紹介だけでなく、知っておくべき用語についても解説していくぞ。
機能や用途、価格などから考えるレンダラーの選び方

レンダラーとは

レンダラーは3DCGを描画する機能やソフトのことです。描画することを「レンダー(レンダリング)」といいます。

次の絵はレンダリング前の状態。
ワイヤーフレーム

レンダリングすると次のようになります。
レンダリングした画像

同じデータでもフォトリアルにしたり、アニメ調にしたりと設定次第で様々な表現が可能です。

レンダリングが数秒で終わる場合もあれば、複数台の高性能マシンを使っても数日かかる場合もあるなど、計算時間はポリゴン数や設定などによって異なります。

MEMO
近年はGPU(グラフィックボード)を使ったレンダラー(GPUレンダラー)によってレンダリング速度が上がっていることなどから、従来は長い計算時間が必要だったアンバイアス(物理的により正確)でフォトリアルな表現を得意とするレンダラーが増えています。

標準レンダラーと外部(サードパーティー製)レンダラー

統合型CGソフトなどに搭載されている「標準レンダラー」に対して、外部の会社が開発・販売しているレンダラーは「外部レンダラー」「サードパーティ製レンダラー」などと呼ばれます。

外部レンダラーは単体提供(スタンドアローン)もありますが、CGソフトに組み込んで使える統合プラグインも合わせて提供されていることが一般的です。

外部レンダラーはすべてのCGソフトに対応しているわけではなく、また同じレンダラーでもCGソフトごとに対応状況(実装している機能など)が異なる場合があります。

ワンコ先生

統合型CGソフトに搭載されている標準レンダラーは、どれも優秀じゃ。初心者は外部レンダラーの導入前に、標準レンダラーで練習すればよいじゃろう。

バイアス(Biased)とアンバイアス(Unbiased)

レンダラーは「バイアス(Biased)」と「アンバイアス(Unbiased)」にわけられます。

ワンコ先生

ざっくりいうと、アンバイアスは物理的により正しく、バイアスはそうでないということじゃな。
じゃあ、アンバイアスの方が強いんですね!

菊千代

ワンコ先生

強いの意味がよくわからんが…これは優劣を決める要素ではないのじゃ。目的に応じて選ぶものじゃな。
参考 Should your renderer be biased or unbiased?LinkedIn 参考 What’s the difference between biased and unbiased render engine?DreamLight 3D 参考 Rendering Terminology Explained Biased vs. Unbiased, Reyes, and GPU-AccelerationLifewire

バイアス・レンダラー

バイアス・レンダラーは様々な設定が可能なため、例えばフォトリアルな表現をしたいが計算時間は抑えたいという場合、微調整も可能です。

品質、レンダリング時間など、重視したいことを優先できますが、設定には慣れが必要になります。

アンバイアス・レンダラー

物理的により正しい計算を行うのが、アンバイアス・レンダラーです。

細かな設定をしなくてもレンダリングできるメリットがありますが、バイアスなレンダラーと比較すると、より計算時間がかかります。

MEMO
そもそも仮想空間であるCGの世界に「物理的に正しい」ものは存在しません。「物理的により正しい」という説明が示しているのは、アンバイアス・レンダラーがレンダリングアルゴリズムなど様々な制限の中で「可能な限り正確に光の経路を計算する」ということです。そのため計算時間がかかりますが、設定は簡単です。

レンダラーで利用されるCPUとGPU

ワンコ先生

最近はGPUレンダラーに注目が集まっておるのう。
GPUレンダラー?

菊千代

ワンコ先生

CPUではなく、GPU(グラフィックボード)を使ってレンダリングを行うのじゃ。レンダリングの高速化など様々なメリットがあるのう。

GPUレンダラーはレンダリングが非常に高速。GPUのハードウェア性能が高いほどレンダリング速度の高速化も見込めますが、GPUに搭載されたメモリ(VRAM)容量が少ないとレンダリングできないこともあります。

またNVIDIAのGPUに対応しているGPUレンダラーが多いため、AMDのGPUが搭載されているMacユーザーは、GPUレンダラーの恩恵をあまり受けられません。

しかしながら、AMD製のレンダラー(Radeon ProRender)が、Cinema 4DやMODOに標準搭載されたり、幾つかのレンダラーがAMDにも対応したりと、状況は変わりつつあります。

参考 GPU への投資がレンダリング速度の向上に直結 ポリゴン・ピクチュアズに聞く GPU レンダラ「Redshift」の実績とはCGWORLD

主なレンダラー

CG関連メディア、SNSなどで目にすることが多く、使用事例も豊富と感じられるレンダラーをまとめました(独断と偏見に基づくものです)。

Arnold

ArnoldはAutodeskがSolid Angleから買収したアンバイアスなレンダラーで、Mayaは標準レンダラーとして利用可能。3DS Maxもベータ版のプラグインがリリースされました(2018年6月現在)。

他にもCinema 4D、Houdini、Katana、Softimage用プラグインが提供されています。

参考 ArnoldSolid Angle 参考 What's Arnold? Arnoldレンダラーとはなにか?基本から説明します!AREA JAPAN(Autodesk)

Cycles

CyclesはBlender projectによって開発されているアンバイアスなレンダラーで、Blenderは無料で利用可能。

他にはPoser、Rinoceros内でCyclesが利用できるプラグインが提供されています。また、Cinema 4Dと3DS Max用のプラグインも利用可能です。

CPUとGPUが利用でき、GPUはNVIDIA(CUDA)とAMD(OpenCL)に対応しています。

参考 Cycles

Maxwell Render

Maxwell Renderは、アンバイアスなレンダラーでCPUとGPUの両方に対応。

バージョン3までは、各種CGソフト向けの統合プラグインが無料で利用できましたが、バージョン4でこれらが有料化されました。複数のCGソフトでMaxwell Renderを利用する場合、個別に購入する必要があります。

開発元のNext Limitは、流体シミュレーションソフトRealFlowの開発元としても有名です。

参考 Maxwell RenderNext Limit

OctaneRender

OctaneRenderは、アンバイアスなGPUレンダラー。バージョン3までは、NVIDIAのGPUにのみ対応していましたが、バージョン4からはAMDのGPUもサポート。


追記(2018年6月15日):

記事公開時にバージョン4からはAMDのGPUをサポートと書いていましたが、現時点では確実とは言い難いので訂正させていただきます。申し訳ありません。

開発元のOTOYは、iMacでOctaneRenderを動作させるデモを2017年のSiggraphでも公開しています。(デモではBoot campを使って、MacにWindows10を入れて動かしています)

OTOYはOctaneRenderをAMD搭載のMacで動作させることに積極的に取り組んでおり、Twitterでも優先度が高いと発言しているため、バージョン4からの対応に期待したいですね。


スタンドアローンだけでなく、Maya、3DS Max、Blender、Rinocerosなど、数多くのCG・CADソフト向けの統合プラグインを提供しており、特にCinema 4Dユーザーに人気があります。

参考 OctaneRenderOTOY

Redshift

Redshiftは世界初の完全GPUレンダラー。バイアスで、ハイエンドなプロダクション向けの製品。

Maya、3DS Max、Cinema 4D、Houdini、Katana向けの統合プラグインを提供しています。

参考 Redshift

RenderMan

世界トップクラスのCGアニメーション制作会社である、Pixarが開発したレンダラー。

現在は別のレンダラーも採用しているPixarですが、引き続きRenderManも利用されています。非商用であれば、無料で利用可能です。

参考 RendermanPixar

V-Ray/V-Ray Next

V-Rayは、統合系CGソフト利用者全般に人気のバイアスなレンダラー。

3DS Maxの対応がもっとも早く、最新版であるV-Ray Nextは3DS Max向けがもっとも早く発売が開始されました。

参考 V-RayChaos Group

GPUメーカーのレンダラー

GPUは、GPUレンダラーの躍進に加えて仮想通貨のマイニング需要などもあって需要は増える一方です。GPUメーカーも独自にレンダラーを開発しています。

NVIDIA Iray

NVIDIA Irayは、GPUを開発しているNVIDIA製のアンバイアスなGPUレンダラー。プロダクトデザイン、建築、照明デザイン、デジタルフォトグラファー向けに開発されました。

CATiA、Substance DesignerとSubstance Painter、SOLIDWORKS VISUALIZEなど複数のソフトウェアで統合利用されています。

NVIDIA IRAY FOR CINEMA 4Dは、2017年11月に新規提供が終了しており、サポートも2018年11月19日まで。

Iray for Maya、Iray for Rhinoなどのプラグイン製品は、Iray統合パートナー企業に譲渡されました。

参考 NVIDIA アドバンスド レンダリング プラグイン製品の移行 参考 NVIDIA Iray

NVIDIA Mental Ray

Mental Rayのスタンドアローン版、Mayaと3DS Max用のプラグインは、2017年11月に新規のサブスクリプション提供が終了。

既存ユーザーはNVIDIAのアドバンスドレンダリングフォーラムから、サポートとソフトウェアの更新を受けられます。

参考 MentalRay

Radeon ProRender

CPUやGPUを開発しているAMD製のアンバイアスなGPUレンダラー。2017年にCinema 4D R19に標準搭載された後、MODOにも搭載されることが発表されました。

Mayaなど、その他のCGソフト向けのプラグインも提供されています。

参考 Radeon ProRenderAMD

ゲームエンジンのリアルタイムレンダラー

ゲーム開発環境に搭載されているリアルタイムレンダラーは、驚くほど美しい描画が可能になっており、建築ビジュアライゼーションや映画、VRなどの分野でも利用されています。

代表格はUnityとUnreal Engineで、両ソフトともに複数のCGソフトとの連携が可能です。

Unity

Unityは、初心者や学生、趣味のユーザーには無料で提供されています。プロの利用は有料(サブスクリプション)です。

参考 Unity

Unreal Engine

Unreal Engineは無料で利用可能。一定の売上を超えた場合に5%を支払うというビジネスモデルになっています。

参考 Unreal Engine

Enlighten

Enlightenは、グローバルイルミネーション(GI)をリアルタイムに処理するミドルウェア。

Unityでは標準のリアルタイム・グローバルイルミネーション技術として組み込まれており、Unreal Engineでもインテグレーション可能。2017年5月にシリコンスタジオが権利を取得しました。

参考 EnlightenSilicon Studio

ポストプロダクションなどが自社開発したレンダラー(非売品)

ポストプロダクションやアニメーションスタジオが独自開発した、非売品のレンダラーがあります。

Hyperion

Hyperionは、ディズニー・アニメーションが開発したレンダラー。

CGアニメーションからフォトリアルまで幅広く高品質なレンダリングが可能で、ウェブで紹介されている画像からは、その品質の高さがわかるでしょう。

Hyperionで採用されているパストレーシングについて解説した動画も公開されています。

参考 HyperionWalt Disney Animation Studios

Manuka

Manukaは、ロード・オブ・ザ・リングやアバターなどのVFXを手がけたことでも有名なWetaが開発したレンダラー。

「猿の惑星:新世紀(ライジング)」では、複数の映像にManukaが採用されました。

参考 ManukaWeta Digital

開発が終了したレンダラー

数多くの会社がレンダラーを開発していますが、中止を発表するメーカーも出てきています。

FurryBall RT(2018年6月 開発中止を発表)

FurryBall RTはGPUレンダラーで、Maya、3DS Max、Cinema 4D向けのプラグインを提供。

残念ながら、本記事執筆中の2018年6月に開発中止が発表されました。

参考 AAA ceases development of FurryBall RT3D Artist 参考 FurryBall RT

その他のレンダラー

Artlantis

Artlantisは、建築家やデザイナー向けのスタンドアローンレンダラー。オプションとしてMaxwell Renderのエンジンが利用可能です。

参考 Artlantis 参考 Artlantis 日本正規代理店

CentiLeo Renderer

CentiLeo Rendererは、現在開発中のアンバイアスなGPUレンダラーで、まだ販売はされていません(2018年6月現在)。

3DS MaxとCinema 4D向けのプラグインがあり、両ソフトのアルファ版が利用可能です。

参考 CentiLeo Renderer

Corona Renderer

3DS Max向けのアンバイアスなレンダラー。ソフトウェア販売以外に、3DS Max向けのクラウドサービスも提供中。

Cinema 4D向けも開発中で、ベータ版が利用可能です(2018年6月現在)。

参考 Corona Renderer

FluidRay

FluidRayは、主に建築やプロダクトデザイン向けのアンバイアスなレンダラー。

リアルタイムレンダリングや操作の簡単さが売りになっています。

参考 FluidRay

Guerilla Render

Guerilla Renderは、アニメーションやVFX業界に向けに開発されたレンダラー。スタンドアローンのみ。

CGモデルの見た目を決定する、ルックデベロップメント(look development)や、ライティングに強いのが特徴。1ライセンスだけなら無料で、商用利用も可能。機能制限は無し。

参考 Guerilla Render

Indigo Renderer

Indigo Rendererは、アンバイアスなGPUレンダラー。Cinema 4D、SketchUp、3DS Max、Blender、Revit向けのプラグインが提供されています。

参考 indigo renderer

KeyShot

Keyshotは、リアルタイムでフォトリアルな描画ができることが強みのアンバイアスなレンダラー。

プロダクトデザインのビジュアライゼーションが得意な印象。スタンドアローンですが、開発元のLuxionからはMaya、3DS Max、Cinema 4DなどのソフトからKeyshotにデータを書き出すためのプラグインを提供。

複数のサードパーティからもプラグインが提供されており、その中にはZBrushも含まれます。

参考 KeyshotKeyshot 参考 Keyshot株式会社3DS

Maneki

Manekiは、Maya用のトゥーン&アウトラインレンダラーです。

参考 Maneki

MARMOSET TOOLBAG

MARMOSET TOOLBAGは、リアルタイムレンダラーです。

参考 MARMOSET TOOLBAG

NOX Renderer

NOX Rendererは、アンバイアスなレンダラー。2014年8月にオープンソース化が発表されました。

参考 NOX RendererEvermotion

POV-Ray

POV-Rayは、オープンソースのレンダラー。Wikipediaによると開発が始まったのは1980年代からで、歴史のあるレンダラーです。

参考 POV-Ray 参考 POV-RayWikipedia

THEA Render

THEA RenderはCPU、GPU両対応のレンダラーで、バイアス、アンバイアスの両方に対応(2つのレンダリングエンジンがある)しています。

スタンドアローンの他に、Cinema 4D、SketchUp、Blender、Rhinoceros向けのプラグインあり。Blenderは無料で利用可能。

参考 THEA Render

付録:レンダラー一覧

本記事で紹介したレンダラーの一覧です。