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3DCGにはWindowsが向いていますが、Macを使うメリットも多くあります。また近い将来、Macの優位性はさらに上がりそうです。
客観的な内容になることを心がけて記事を書いていますが、筆者がApple製品大好きなため、偏りが出ている部分に関しては何卒ご容赦ください!
Table of Contents
なぜ3DCGにはWindowsが向いているのか
3DCGにはWindowsが向いている理由は、主に次の4つです。
- 自由にカスタマイズできる
- 初期導入コストを抑えられる
- NVIDIAのGPUが利用できる
- Windowsでしか使えないソフトがある
Macはユーザーによるハードウェアのカスタマイズがほとんどできません。また価格も高めなので初期導入コストが高くなりがちです。
もっとも致命的なのが、CGに欠かせない存在になってきているNVIDIAのグラフィックボードが使えないこと。また3DS MaxのようにWindows版しかないソフトもあります。
しかし2019年末にはカスタマイズ可能なMac Proが発売され、CGソフトやレンダリングソフトの開発元が徐々にAMDのグラフィックボード(Metal)にも対応してきたことで、状況が少しずつ変わってきました。
3DCGにMacを使うメリット
過去の記事ではMacを使うメリットについては少ししか触れませんでしたが、実際には次のようにMacが優れている部分も多くあります。
- 製品が絞り込まれていて選びやすい
- 剛性が高い
- バックアップ、データ移行が簡単
- サポートの信頼性が高く、トラブル対応しやすい
- Mac上でWindowsも利用できる(逆はできない)
- Macでしか使えないソフトがある
- リセールバリューが高い
- デザイン性が高い(所有満足度が高い)
- OSが美しく、使いやすい
- CGソフトのMetal対応でGPUが使えるようになる
1. 製品が絞り込まれていて選びやすい
MacはWindowsのように自分でパーツを買って自作することはできず、Appleが用意した製品群の中から選ぶ必要があります。製品ラインナップはシンプルで、様々なメーカーが参入しているWindowsと比べると種類はかなり少ないです。
悪くいえば選択肢が少ないのですが、逆にいえば迷わずに済みます。Windowsはすべてのパーツを選び、自作できる一方で「相性問題」というリスクがあります。相性が悪ければ、最悪の場合は動作しません(あまり多くはないかもしれませんが)。
ショップによっては相性保証を提供していたり、BTOパソコンのサイコムのようにすべてのパーツを自分で選びつつ、組立や動作確認を購入者に代わって行ってくれる販売店もあります。
しかしMacなら、そもそも相性問題がありません(サードパーティ製の外付パーツなどは例外)。必要であれば注文時にCPUやメモリ、ストレージ容量などをカスタマイズ可能です(カスタマイズできる内容は製品によって異なります)。
拡張性に乏しいといわれるMacですが、機種によってはある程度のカスタマイズが可能です。実際にMac miniをカスタマイズしてCG・映像系ソフトでどれぐらいパフォーマンスが向上したかを、映像作家のTachibanaさんが詳しく書かれています。eGPUを使うことで、かなり快適になるようです。
2. 剛性が高い
プロは撮影現場にパソコンを持ち込んで作業を行うことも珍しくありません。マシンパワーが必要な場合はデスクトップが使われることもあります。
パソコンをバックパックや鞄に入れて移動していると振動もあり、ときには何かにぶつけてしまう恐れも。現在のMacはすべてアルミ製なので、プラスチック製のパソコンに比べて剛性が高く、丈夫です。そのぶん重くはなりますが、プロにとっては信頼感があるでしょう。
もちろん、Windowsにも金属製ボディの丈夫な筐体のマシンはありますが、現行のMacならすべての機種がアルミボディという安心感があります。
3. バックアップ、データ移行が簡単
macOSに標準搭載されているバックアップ機能(Time Machine)は、非常に手軽で強力。バックアップ用のディスクを指定して簡単な設定を行えば、あとは自動でOSも含めたパソコンの中身が定期的に保存されます。データの復旧も直感的で簡単。Windowsにもバックアップ機能は搭載されていますが、Macほどわかりやすくありません。
Macはデータ移行も容易で、すべてのデータを簡単な操作で新しいMacにそのまま移せます。
4. サポートの信頼性が高く、トラブル対応しやすい
Macはハードウェアもソフトウェア(OS)もAppleが開発し、サポートも提供しています。ユーザー自身がカスタマイズできる範囲は限定的ですが、ハードやソフトの相性問題に悩むことは基本的にありません。
サポートはオンラインに加えて、直営店に持ち込んで直接相談も可能。問題が解決しない場合、保証期間内であればハードウェア交換が行われることもあります。
ハードウェアをAppleに預けたり、交換したりするときは、Time Machineでデータをバックアップし、新しいハードウェアにそのまま戻せば復旧も簡単です。
製品は全般的に高めですが、万が一のときのサポートが含まれていると考えると納得できる部分もあります。保証はApple Careにより延長可能。保証が切れても相談はでき、有料で修理などの対応も受けられるので、安心感が高いです。
5. Mac上でWindowsも利用できる(逆はできない)
Macでは、Windows OSを利用可能です。Boot CampというMac公式ソフトを使ってディスク領域をわけて、macOSとWindows OSを共存させられます。
またParallelsやVMwareなどサードパーティ製の仮想化ソフトを使うことによって、Macにインストールした仮想化ソフトの中にWindows OSをインストールして使用可能です。ただし仮想化ソフトを使う方法は、ソフトの中にソフトをインストールすることとなり、ハードウェアに直接インストールする場合と比較して、パフォーマンスは落ちます。
ITmedia NEWSの記事によると、Apple Siliconが採用されたMacではBoot Campはサポートされないとのこと。ただし仮想化ソフトを使ってWindowsをインストールすることは引き続き可能なようです。
Apple Silicon MacはBoot Campをサポートしない | ITmedia NEWS
6. Macでしか使えないソフトがある
Windowsでしか使えないソフトがあるように、Macでしか使えないソフトもあります。CGに関係しそうなもので代表的なのが、動画編集ソフトのFinal Cut Pro Xや音楽制作ソフトのLogic Pro Xなどです。
機能から考えると比較的安価で、サブスクではなく、永久ライセンスというのも魅力かもしれません。
Final Cut Pro X – Apple(日本)
Logic Pro – Apple(日本)
7. リセールバリューが高い
Macは人気が高く、状態がよければ中古品でも高値で売れます。個人的な経験ですが、10年以上使ったMacBook Airが3万円以上(購入価格は約8.4万円)、4年以上使ったiMac(メモリ増設あり)が14万円(購入価格は約32万円)など、使用年数に対してかなりの高値で売れました。
非常に丁寧に扱っていて、箱や付属品もすべて揃っていたなど、条件はかなりよかったのですが、ここまで高く評価されるのはMacならではといえそうです。
Macは初期導入費用は高めですが、リセールバリューが高く、買い替えしながら使っていくことを考えるとお得感はあります。
8. デザイン性が高い(所有満足度が高い)
Appleは、創業者の故スティーブ・ジョブズが異常なまでにデザインにこだわり、長年、インダストリアル・デザイン部門を率いていたジョナサン・アイブは、上級副社長という要職に就くなど、企業としてデザインを重視していることで有名です。
理想を実現するために、素材や加工方法にもこだわり、OSの使いやすさや美しさも魅力的。「アップルのデザイン ジョブズは”究極”をどう生み出したのか」には、詳しく書かれています。
個人的にApple製品のデザインには大変魅力を感じていて、所有することによる満足度は非常に高いです。
9. OSが美しく、使いやすい
デザインへのこだわりはハードウェアだけでなく、macOSは見た目も美しく、使い勝手もよいです。例えばOSの設定に関することは「システム環境設定」に見やすいアイコンとともにまとめられています。
ファイルなど情報を検索するための機能を「Spotlight」、バックアップ機能を「Time Machine」という名称にするなど、専門用語をわかりやすい表現に変え、親しみが感じられるのもmacOSの特徴。
わかりやすいのは名前だけではありません。Spotlightはどこからでも呼び出すことができ、検索窓にキーワードを入力すれば、そのワードを含むファイル、フォルダ、アプリケーションなどをMac内を横断検索して表示してくれます。
バックアップデータが必要なときは、Finder(フォルダのようなもの)を開いてTime Machineを起動し、画面右端に表示されるタイムラインでおおよその月日を指定すると、中身が指定日まで戻るので、あとは復元したいファイルなどを選んで戻すだけです。
MacとWindowsを両方使ってみると、グラフィックの美しさや機能のわかりやすなどを実感できます。ただ近年は新しいOSが不安定な場合があり、リリース後は安定化するまで様子を見ないと怖いです。この点は改善を期待しています。
10. CGソフトのMetal対応でAMDのGPUが使える
CG制作に欠かせない存在になっているグラフィックボード。主要CGソフトはNVIDIAのグラフィックボードに最適化されていますが、最新のMacはAMDのグラフィックボードしか使えません。
これがMacをCG制作のメインツールとして使いにくくしている大きな理由ですが、CGソフトやレンダラーなどの開発元がようやくAMDのグラフィックボード(Metal)に対応してきました。
NVIDIAが提供しているCUDA(GPU向けのC/C++言語の統合開発環境)は、同社のGPUに最適化されており、利用者の多さやライブラリの充実などメリットは多くあります。
一方でMetalは、macOSやiOSなどAppleのOSに最適化されたコンピュータグラフィックスAPIで、レイトレーシングがさらに高速化するそうです。CG・映像ソフトがきちんと対応できてきたら、NVIDIAのGPUを超えるパフォーマンスも期待できます。
Apple Siliconへの期待と不安
これまでMacにはIntelのCPUが採用されてきましたが、2020年から2年をかけてApple Siliconという独自CPUに移行していくことが発表されました。これによりMacのパフォーマンス向上が期待されます。
Apple、MacにAppleシリコンを搭載することを発表 – Apple (日本)
しかし核となるCPUの刷新なので、すべてのサードパーティ製ソフトが最適化されるまでには時間がかかりそうです。
将来的には大きなメリットがあると思われるApple Siliconへの移行ですが、安心して使えるようになるまで少し時間がかかるかもしれません。
再び制約なくMacでCGできる日は近い
もう一度、3DCGにWindowsが向いている主な理由を見てみましょう。
- 自由にカスタマイズできる
- 初期導入コストを抑えられる
- NVIDIAのGPUが利用できる
- Windowsでしか使えないソフトがある
カスタマイズ性はWindowsほどではありませんが、デスクトップであればメモリは増設でき、外付ストレージやeGPUも使えます。NVIDIAのグラフィックボードは使えませんが、AMDがCG用に使えるようになるため問題はなく、eGPUによって、Mac Pro以外の機種でもグラフィックボードを拡張可能です。
初期導入コストの高さはありますが、リセールバリューはWindowsよりも高いので、4年周期ぐらいで買い替えながらの運用を考えればコストは抑えられます。
Windowsでしか使えないソフトに関しては、それほどマシンパワーを使わないサブツール的なものならBoot Campなどでもよいと思いますが、さすがに3DS Maxのようなメインツールの場合は、Windowsマシンを使った方がよいですね。
私の場合、メインで使っているCinema 4DはMacに対応しているものの、Octane RenderやRedshiftという魅力的なGPUレンダラーが、AMDのグラフィックボードには対応していなかったため、2018年にWindowsデスクトップを導入しました。
しかし2020年にはOctane RenderやRedshiftのMetal対応版も公開されて、MacでもようやくGPUを生かした機能が使えるようになりそうです。
Apple製品大好きなので、最高峰のMac Proを購入したいところではありますが、欲しいスペックにカスタマイズすると100万円を超えそうで、さすがにすぐに手が出ません。そもそも私程度の使い方ではオーバースペックです(笑)現実的に考えると、メモリは自分で増設する前提で「Mac mini + eGPU」がコスパ最高な気がします。
CG業界はWindowsがメインになっており、Macがサブ的に使われることはあっても、Windowsにとって変わることは考えにくいわけですが、個人や小規模環境でCGをしていて、どちらでも選べるようであれば、MacでCGができた方が楽しいと思います。MacとWindows、両OSを長く使ったことがある人なら、きっとわかるはず!
Apple Siliconへの移行が完了する2022年には、Macでより快適なCG環境が構築できることをいまから期待しています。