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カメラの表現としては定番の被写界深度(Depth-of-field)について説明します。
Table of Contents
被写界深度とは
ワンコ先生
菊千代
ワンコ先生
被写界深度とは、カメラのピント(焦点)の合う範囲のことです。
次の写真のようにピントの合う範囲が狭い場合は「被写界深度が浅い」といいます。
逆にピントの合う範囲が広い場合は「被写界深度が深い」といいます。
図のように被写界深度が深い場合は、広い範囲が鮮明になり、浅い場合はピント位置の前後から外れた被写体はぼけます。
被写界深度に影響を与える要素
ワンコ先生
菊千代
ワンコ先生
被写界深度は、次の3点によって変わります。
- F値(絞り値)
- 焦点距離
- 撮影距離
F値(絞り値)
デジタル一眼カメラなどのレンズには、レンズから入る光の量を調整するための「絞り(Aperture)」が備わっています。
絞りによってカメラに取り込む光の量を数値化したものが、F値(絞り値)です。
F値を小さくする(絞りを開放する)とカメラに入る光の量が多くなり、被写界深度は浅くなります。(写真のF値はF1.8)
逆にF値を大きくする(絞りを絞る)と光の量が少なくなり、被写界深度は深くなります。(写真のF値はF5.0)
F値(F-number)の「F」は、「焦点の」を意味する「Focal」の頭文字です。レンズの明るさを示すときに「F1.8」のように使われます。Fに続く数字が小さいほど明るい(カメラに取り込む光の量が多い)ことを示していて、レンズの一番小さいF値を「開放F値」「開放絞り」などといいます。
焦点距離
焦点距離は、レンズの中心(主点)からイメージセンサー(アナログカメラならフィルム)までの距離のことです。
被写界深度は、ズームレンズを使う(焦点距離を長くする)と浅くなり、広角レンズを使う(焦点距離を短くする)と深くなります。
ズームレンズで焦点距離を長くして撮った写真。背景のぼけが強くなっています。
同じく焦点距離を短くして撮った写真。カーテンの模様のぼけ具合が弱くなっています。
焦点距離を変更できるのが「ズームレンズ」、固定されているのが「単焦点レンズ」です。単焦点レンズの場合、自らが動いて被写体との距離を調整し、構図を決める必要がありますが、明るい(=絞りが大きく開く)レンズが多く、F値を小さくして、背景にきれいなぼけを作りやすいという利点があります。
センサーサイズ(フィルムサイズ)が異なると、ぼけ方や画角にも影響が出ます。
撮影距離
撮影距離は、カメラと被写体との距離です。
被写界深度は、撮影距離を短くすると浅くなり、長くすると深くなります。
被写体に近づいて撮影した写真は、背景が強くぼけています。
被写体から離れて撮影した写真は、近づいて撮った場合と比べて、背景のぼけ具合が緩めです。
被写界深度の効果
被写界深度を活用することで、次のような効果が期待できます。
- ピントを合わせた被写体に、視線を誘導できる
- 見せたくないものを隠せる(ぼかせる)
- パンフォーカスできる
例えば、人物を撮影するときに被写界深度を浅めにすると、人物の前後がぼけて自然と主役となる人物に視線が引き寄せられます。
逆に集合写真のように、特定の被写体にピントを合わせたくない場合は、被写界深度を深めにする(パンフォーカスする)とよいでしょう。
パンフォーカスとは、被写界深度を深くして、手前から奥までの全体にピントを合わせる方法、またはその方法で撮影された静止画や動画のことです。パンフォーカスは和製英語で、ディープフォーカス(Deep Focus)が英語的に正しい表現になります。
CGソフトで被写界深度を表現する
CGソフトや外部レンダラーは、ソフトウェアによってカメラの設定項目が異なります。現実のカメラに近い設定のものもあれば、そうでないものもあるため、利用するソフトの設定を確認したうえで現実のカメラの知識を生かしてください。
現実のカメラの原理を踏まえて、CGソフトで被写界深度を設定してみます。今回はMODOを使いました。オブジェクトは次のように配置。
F値1.8、焦点距離50mmに設定して球体にピントを合わせると、被写界深度が浅くなって前後のオブジェクトがぼけます。
カメラ位置と焦点距離(50mm)はそのままでF値を22に設定すると、被写界深度が深くなって球体の前後のオブジェクトもぼけません。
CGソフトの場合、被写界深度機能をオフにすれば全体が鮮明になります。
F値1.8、焦点距離50mmのまま、カメラを後方に引く(撮影距離を長くする)と、被写界深度が深くなります。
カメラをさらに後方に引き、F値5.0、焦点距離を200mmに設定すると、同様に被写界深度が深くなり、球体の前後のオブジェクトがぼけません。(このとき、F値を1.8にすると球体の前後がぼけます。)
現実のカメラのF値は、F1.4程度でかなり明るいといわれます。CGのカメラはF0.001などという現実にはありえない設定も可能ですが、カメラの設定値やオブジェクトのサイズなどは、現実に合わせた方がよいでしょう。CGにしかできない表現をする癖がついてしまうと、現実のカメラを忠実に再現したレンダラーなどを使うときに知識が応用できなくなるからです。
焦点距離(Focal Length)とフォーカス距離(Focus Distance)
CGソフトのカメラ設定では「焦点距離(Focal Length)」と「フォーカス距離(Focus Distance)」という項目があります。
「Focal(焦点の)Length(長さ)」も「Focus(焦点)Distance(距離)」も、似たような単語の組み合わせになっており、違いがわかりにくいです。
焦点距離は、レンズの主点とイメージセンサー(フィルム面)との距離を意味します。
フォーカス距離は、カメラからピントが合う位置までの距離です。CGソフトでは次のイラストのように、カメラ前方の突起がピント位置になっていて、それを動かして直感的にフォーカス距離を決められるものもあります。
デジタル一眼カメラは、CGカメラの勉強に最適
ワンコ先生
菊千代
ワンコ先生
例えば「F値(絞り値)」は、絞りと呼ばれる部品がレンズを通してカメラに入る光の量を調整し、それにより被写界深度に影響が出ることがわかりました(絞りの役割はそれだけではありませんが、今回は被写界深度に関係することだけを説明しています)。
このような原理が理解できると、より現実に近い感覚でCGのカメラを使いこなせます。
フォトリアルなものを作りたければ、オブジェクトの大きさや形、照明やカメラの設定などを現実に合わせることで説得力を持たせることが可能です。
またCGソフトやレンダラーが変わっても、いち早くカメラ関連の設定を理解できるでしょう。
デジタル一眼カメラは中古品なら安価なものも多いです。CGについてより深く理解したいなら、手元に置いて色々と試してみることをお勧めします。
参考にしたウェブサイト
本記事執筆のため、次のウェブサイトを参考にしました。