CGの表現としては定番の被写界深度(Depth-of-field)とは

被写界深度

カメラの表現としては定番の被写界深度(Depth-of-field)について説明します。

被写界深度とは

ワンコ先生

菊千代、被写界深度とはどういうものかわかるかな?
はい!カメラの設定でぼけを出すやつですよね!

菊千代

ワンコ先生

ちょっと、ざっくりすぎじゃな。きちんとした定義を確認してみようかのう。

被写界深度とは、カメラのピント(焦点)の合う範囲のことです。

次の写真のようにピントの合う範囲が狭い場合は「被写界深度が浅い」といいます。

被写界深度浅め

被写界深度が浅く、背景がぼけている写真

逆にピントの合う範囲が広い場合は「被写界深度が深い」といいます。

被写界深度深め

被写界深度が深く、全体が鮮明な写真

図のように被写界深度が深い場合は、広い範囲が鮮明になり、浅い場合はピント位置の前後から外れた被写体はぼけます。

被写界深度の範囲

被写界深度が浅いとピント位置前後の狭い範囲だけが鮮明になる

被写界深度に影響を与える要素

ワンコ先生

菊千代よ、デジタル一眼で被写界深度を使うには、どうすればよいかわかるかな?
え!デジタル一眼だと、オートで撮れば大体いい感じになるんですが…

菊千代

ワンコ先生

確かにオートを選べば、多くの場面でいい感じにはなるのう。しかしそれでは、思い通りの表現はできん。被写界深度の深さを自分で決められる方法を知ることが重要じゃ。

被写界深度は、次の3点によって変わります。

  • F値(絞り値)
  • 焦点距離
  • 撮影距離

F値(絞り値)

デジタル一眼カメラなどのレンズには、レンズから入る光の量を調整するための「絞り(Aperture)」が備わっています。

絞りによってカメラに取り込む光の量を数値化したものが、F値(絞り値)です。

絞りと被写界深度

絞りを開くと被写界深度が浅くなり、絞ると深くなる

F値を小さくする(絞りを開放する)とカメラに入る光の量が多くなり、被写界深度は浅くなります。(写真のF値はF1.8)

被写界深度(F値1.8)

F値を小さくすると被写界深度は浅くなる

逆にF値を大きくする(絞りを絞る)と光の量が少なくなり、被写界深度は深くなります。(写真のF値はF5.0)

被写界深度(F値5.0)

F値を大きくすると被写界深度は深くなる

MEMO
F値(F-number)の「F」は、「焦点の」を意味する「Focal」の頭文字です。レンズの明るさを示すときに「F1.8」のように使われます。Fに続く数字が小さいほど明るい(カメラに取り込む光の量が多い)ことを示していて、レンズの一番小さいF値を「開放F値」「開放絞り」などといいます。

焦点距離

焦点距離は、レンズの中心(主点)からイメージセンサー(アナログカメラならフィルム)までの距離のことです。

焦点距離

焦点距離はレンズの主点からイメージセンサー(フィルム)までの距離

被写界深度は、ズームレンズを使う(焦点距離を長くする)と浅くなり、広角レンズを使う(焦点距離を短くする)と深くなります。

ズームレンズで焦点距離を長くして撮った写真。背景のぼけが強くなっています。

被写界深度(焦点距離長め)

ズームレンズで焦点距離を長くして撮った写真

同じく焦点距離を短くして撮った写真。カーテンの模様のぼけ具合が弱くなっています。

被写界深度(焦点距離短め)

ズームレンズで焦点距離を短くして撮った写真

MEMO
焦点距離を変更できるのが「ズームレンズ」、固定されているのが「単焦点レンズ」です。単焦点レンズの場合、自らが動いて被写体との距離を調整し、構図を決める必要がありますが、明るい(=絞りが大きく開く)レンズが多く、F値を小さくして、背景にきれいなぼけを作りやすいという利点があります。
MEMO
センサーサイズ(フィルムサイズ)が異なると、ぼけ方や画角にも影響が出ます。

撮影距離

撮影距離は、カメラと被写体との距離です。

撮影距離

撮影距離はカメラと被写体の距離

被写界深度は、撮影距離を短くすると浅くなり、長くすると深くなります。

被写体に近づいて撮影した写真は、背景が強くぼけています。

被写界深度(近くで撮影)

撮影距離が短いと被写界深度は浅くなる

被写体から離れて撮影した写真は、近づいて撮った場合と比べて、背景のぼけ具合が緩めです。

被写界深度(離れて撮影)

撮影距離が長いと被写界深度は深くなる

被写界深度の効果

被写界深度を活用することで、次のような効果が期待できます。

  • ピントを合わせた被写体に、視線を誘導できる
  • 見せたくないものを隠せる(ぼかせる)
  • パンフォーカスできる

例えば、人物を撮影するときに被写界深度を浅めにすると、人物の前後がぼけて自然と主役となる人物に視線が引き寄せられます。

逆に集合写真のように、特定の被写体にピントを合わせたくない場合は、被写界深度を深めにする(パンフォーカスする)とよいでしょう。

MEMO
パンフォーカスとは、被写界深度を深くして、手前から奥までの全体にピントを合わせる方法、またはその方法で撮影された静止画や動画のことです。パンフォーカスは和製英語で、ディープフォーカス(Deep Focus)が英語的に正しい表現になります。

CGソフトで被写界深度を表現する

注意
CGソフトや外部レンダラーは、ソフトウェアによってカメラの設定項目が異なります。現実のカメラに近い設定のものもあれば、そうでないものもあるため、利用するソフトの設定を確認したうえで現実のカメラの知識を生かしてください。

現実のカメラの原理を踏まえて、CGソフトで被写界深度を設定してみます。今回はMODOを使いました。オブジェクトは次のように配置。
被写界深度テスト用オブジェクト

F値1.8、焦点距離50mmに設定して球体にピントを合わせると、被写界深度が浅くなって前後のオブジェクトがぼけます。

F値1.8、焦点距離50mm

F値1.8、焦点距離50mm

カメラ位置と焦点距離(50mm)はそのままでF値を22に設定すると、被写界深度が深くなって球体の前後のオブジェクトもぼけません。

MEMO
CGソフトの場合、被写界深度機能をオフにすれば全体が鮮明になります。
F値22、焦点距離50mm

F値22、焦点距離50mm

F値1.8、焦点距離50mmのまま、カメラを後方に引く(撮影距離を長くする)と、被写界深度が深くなります。

F値1.8、焦点距離50mmで撮影距離を長くする

F値1.8、焦点距離50mmで撮影距離を長くする

カメラをさらに後方に引き、F値5.0、焦点距離を200mmに設定すると、同様に被写界深度が深くなり、球体の前後のオブジェクトがぼけません。(このとき、F値を1.8にすると球体の前後がぼけます。)

F値5.0、焦点距離200mm

F値5.0、焦点距離200mm

MEMO
現実のカメラのF値は、F1.4程度でかなり明るいといわれます。CGのカメラはF0.001などという現実にはありえない設定も可能ですが、カメラの設定値やオブジェクトのサイズなどは、現実に合わせた方がよいでしょう。CGにしかできない表現をする癖がついてしまうと、現実のカメラを忠実に再現したレンダラーなどを使うときに知識が応用できなくなるからです。

焦点距離(Focal Length)とフォーカス距離(Focus Distance)

CGソフトのカメラ設定では「焦点距離(Focal Length)」と「フォーカス距離(Focus Distance)」という項目があります。

「Focal(焦点の)Length(長さ)」も「Focus(焦点)Distance(距離)」も、似たような単語の組み合わせになっており、違いがわかりにくいです。

焦点距離は、レンズの主点とイメージセンサー(フィルム面)との距離を意味します。

フォーカス距離は、カメラからピントが合う位置までの距離です。CGソフトでは次のイラストのように、カメラ前方の突起がピント位置になっていて、それを動かして直感的にフォーカス距離を決められるものもあります。

フォーカス距離

フォーカス距離はカメラのピント位置までの距離

デジタル一眼カメラは、CGカメラの勉強に最適

ワンコ先生

どうじゃ菊千代、被写界深度の基本について理解できたかな?
はい!いままであまりにも無知なままデジタル一眼を使っていたことがわかりました…

菊千代

ワンコ先生

オートしか使ったことがない人は多いじゃろうな。しかしCGをやるなら、マニュアル撮影も試してみるとよいじゃろう。知識として役立つことも多いからのう。

例えば「F値(絞り値)」は、絞りと呼ばれる部品がレンズを通してカメラに入る光の量を調整し、それにより被写界深度に影響が出ることがわかりました(絞りの役割はそれだけではありませんが、今回は被写界深度に関係することだけを説明しています)。

このような原理が理解できると、より現実に近い感覚でCGのカメラを使いこなせます。

フォトリアルなものを作りたければ、オブジェクトの大きさや形、照明やカメラの設定などを現実に合わせることで説得力を持たせることが可能です。

またCGソフトやレンダラーが変わっても、いち早くカメラ関連の設定を理解できるでしょう。

デジタル一眼カメラは中古品なら安価なものも多いです。CGについてより深く理解したいなら、手元に置いて色々と試してみることをお勧めします。

参考にしたウェブサイト

本記事執筆のため、次のウェブサイトを参考にしました。

キャノンイメージゲートウェイ 写真用語集

ソニー デジタル一眼カメラα(アルファ)活用ガイド

ニコン デジタル一眼レフカメラの基礎知識

ウィキペディア