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2025年9月、妻用のパソコンを自作しました。mini-ITXなので同等スペックのATX機よりも高めですが、吟味したケースの満足度は超高く、毎日うっとりしています。今回はグラボ無しですが、搭載すればCG用にも使えます。なぜmini-ITXで組むことになったのか、自作するうえでの注意点などを交えてお伝えします。
Table of Contents
妻のパソコンがシャットダウンを繰り返し、買い替え不可避に
今年になってから妻のパソコンが突然シャットダウンするように。日に日に頻度が高くなり、まともに仕事ができる状態ではなくなっていきました。様々な対策を講じたものの不調は収まらず。10月にはWindows 10のサポートが切れるし、ハードがこれだけ不調では延長サポートで使うことも難しいということで、パソコンを新調することになりました。
乗り換えが高くつくメーカー製はやめて、自作パソコンを選択
これまでの妻用パソコンはラップトップ一筋。場所を選ばず使えるのは便利ですが、実際には持ち出して使うことは少なく、自宅でもほとんどの時間を仕事部屋で外部モニターに接続して使っていました。メーカー品のラップトップはOSもプリインストールでお得に感じますが、寿命が来たらパソコンごと買い換え。
自作なら個別のパーツをアップグレードできるし、問題があるパーツは自身で交換可能。スペックに問題がないけどOSのサポート期限が切れるという場合もソフトだけを入れ替えられて無駄がありません。そんなわけで新たな妻用パソコンは自作することにしました。
趣味が講じて、ATXより高くつくmini-ITXで自作することに
妻はパソコンに対するこだわりは無いので、ATXのマザーボードで安いケースを選べば比較的安価に自作できます。ただデスク周りはできるだけすっきりさせたい私には、ATXは存在感ありすぎ。昨年組んだMicroATX機はATXのミドルケースと比べて格段にダウンサイズしましたが、机に置くとまあまあな大きさ。CG用だし、拡張性を考えるとしょうがないのですが。

一方、mini-ITXは机に置いても邪魔にならないサイズ感。mini-ITXを知ったきっかけは2022年3月に公開されたVookの記事。小さくてもRTX3070搭載で必要十分な性能。いまでも普通に使えそう。

パフォーマンスがさらに向上した第12世代インテル Core i7プロセッサー。ケースや加工にこだわればスタイリッシュなクリエイターPCが自作できるのか試してみた!|Vook
妻はOffice系のソフトがメイン。あとはブラウズしたり、YouTubeを見るぐらいの軽めな使い方なのでグラボは不要。スペースが限られているmini-ITXケースでもグラボ無しなら余裕があるはず。ということで、趣味全開でmini-ITXマシンを組むことにしました。
mini-ITX機のケースはFormD T1
ケースの第一候補はVookの記事で紹介されていたLouqe Ghost S1でした。Ghost S1がよいのは圧倒的なミニマルさ。フロントには小さな電源ボタンがあるだけで、USBポートは1つもありません。オプションパーツによって上下にサイズを拡張できるところも実用的。しかし希望のカラー(Limestone)がなく、販売が続くのかも不明だったため見送り。
色々と探しまくっていて見つけたのがS1そっくりなCOOJ Z13のケース。上面の電源ボタンとUSBポートはデザインに溶け込んでいて目立たず、フロントには何もありません。カッチリとした作りで強度もありそう。ただレビュー動画を見ると、ミニマルすぎてデザイン要素が乏しく感じられました。
また公式サイトに開発元の情報が無いのが超不安。問い合わせ先のメールアドレスや掲示板を介してコミュニケーションは取れるものの、社名も個人名も出ていないのはさすがに怖い。ということで選外に。

最終的にこれだ!となったのが、FormD T1でした。縦横高さの絶妙なバランス、質感の高いアルミボディ、サイドに小さく配置された電源ボタン、ミニマルだけどデザインのアクセントとなるデザイン要素もあり、総合的にもっとも美しいと感じました。FormD T1は、SFF(Small Form Factor)ケースとしては定番のようです。上・底面は全面的に小さな穴が空けられおり、両サイドもメッシュで通気性は抜群。その分、音はうるさそうだけどmini-ITXに静音性は求められないと割り切りました(が、グラボ無しということもありめちゃくちゃ静音な仕上がりになったのは嬉しい誤算)。

色々比較して感じたことですが、やはりこのデザインがよいのはこのサイズだから。同じデザインでも倍の大きさだと存在感が出てしまい、別物に感じられるのです。少しデザインは違うけどLouqeなどがミニマルなMicroATX対応の一回り大きなケースを出していますが、まったく魅力がありません。やはり小さいことが大きな要素なんだなと。
ちなみに購入時に戸惑ったのは、デザインも名称も同じ製品がFormDとNCASEという異なるウェブサイトで販売されていたこと。どうやら開発元は1つだったようですが枝分かれしたようです。FormDは T1というケースを追求してバージョンアップさせていますが、NCASEはMシリーズという異なるサイズのケースも作っています。次のような状況がさらに混乱を招きます。
- FormDとNCASEはドメインは異なるがウェブサイトのデザインは同じ
- FormDで製品写真をクリックするとNCASEに飛ばされる場合がある
- 同じ製品でも色によってFormDからNCASEに遷移するものとしないものがある
海外からの取り寄せだし3万円以上する高額製品だったので、信頼性は重視しました。でも日本で輸入販売しているショップもあるし、レビューの多い製品だったので問題ないと判断して注文。無事に届きました。
開発元はアメリカだったがトランプ関税は回避できた
購入に際しては関税も注意深く確認。元々はアメリカから出荷されていたようですが、現在は生産国の中国から出荷しています。関税は販売元ではなく、出荷される国からかけられるものなので(今回、初めて知りました)アメリカの会社であってもトランプ関税の影響はありませんでした。
極小PCのパーツ選びで学んだこと、はまったこと
初めてのmini-ITX自作に際して、学んだことや、はまったことをまとめておきます。
グラボ無しで画面出力するには対応CPUが必要
グラボ無しの場合、接続したモニターに画面を出力するためにはグラフィック機能を持ったCPUが必要ということを今回初めて知りました。Intelはほぼすべてが対応しているようですが、AMDは型番の末尾に「Ryzen 5 3400G」のように「G」が付いているものでないといけないらしい。マザボにHDMI端子とかあっても、CPUが対応してないと駄目なんですね。
Intelの最新CPUは高額でオーバースペックだったためAMDを選択
mini-ITXマザーボードは、ATXと比べて割高で種類も少ないです。今回はOffice系ソフトの利用が中心だし、なんとなくIntelの方が相性がよいと考えました。スペック的に一世代古い規格でも問題なし。メモリはDDR4で十分。しかし…そんな前提で選んだマザーボードに対応するCore-i世代のIntel CPUは見つからず。最新のCore Ultraはスペックも価格も高く、マザボもメモリも最新規格になるため、CPUはAMDにすることに。いまどきはハードとの相性が悪くてOfficeが動かないなんてこともないので問題ありません。
電源はブランドと容量を重視したが、1つミスした
電源は信頼できるメーカーで、必要十分な容量があればよいと思っていました。そこは間違いではないのですが、今回選んだ FormD T1は mini-ITXケースの中でもかなり小さい部類に入るのでレイアウトはシビア。不要な電源ケーブルは外せるようにすべきでしたが、外せないタイプの電源を購入してしまいました。
かさばるグラボ用のケーブルは外しておけばケース内がすっきりしたのに… まあグラボを搭載しない分のスペースがぽっかり空いているので、そちらに余裕で収まるんですが。ケーブルが外せないタイプは、電源本体とケーブルとの接続が緩んだりしないというメリットもあるので悪いことばかりではありません。
DSP版を製品版に見せかけた、安価なWindows 11に要注意
今回はDSP版ではなく製品版のWindows 11を購入したのですが、微妙に安く販売しているショップがありました。Amazonや老舗のパソコンショップより、聞いたこともないショップが数千円安いのは違和感があります。レビューを読み進めると、DSP版をあたかも製品版のように売っていることがわかりました。
多くの方達が安く買えてよかったと高評価している中で、リテラシー高めの方が気付いて指摘されていました。巧妙なのは製品版よりは安く、DSP版よりは高めの設定になっているところ。非常に悪質。まがい物をつかまないよう信頼できる大手のショップで購入しました。
mini-ITX用に選んだパーツ
CPUは「AMD Ryzen 5 3400G」で今回の用途では必要十分なスペック。末尾に「G」が付く、画面出力可能な製品。
CPUファンはCPUに付属していましたが、ケースの小ささを考えてロープロファイルなものに。Noctua製は購入時7,980円とお高めでしたが小さくても高性能で静音設計とのこと。実際ほぼ無音で大正解でした。カラーが黒でなければもう少し安かったです。
メモリスロットは2つしかないので多めに積みたいところだったけど32GBはオーバースペックだし、費用を抑えたかったので16GBに。
M.2 SSD は500GBで十分。空きスロットがあるので足りなくなったら増設できます。
高くて選択肢が少ないのがmini-ITXのマザボ。一世代前の規格を選んだのでさらに選択肢が狭まりました。ATXなら1万円台の製品も豊富ですが、今回のものは3万円超え。
電源はSFX規格。グラボ無しなので500Wもあれば十分でした。選択肢が少なく、希望のメーカーだと容量が大きかったので消去法でSilverstone製にしましたが80Plus Bronze認証ならよいかなと。前述のとおり、ケーブルが取り外せないタイプを選んだのは痛恨のミスでした。
ケースファンもCPUと同じくNoctua製品。静音できちんと冷却してくれてめちゃよい。
Windows 11は、信頼できるショップで購入すべし。数千円のために誤った選択をしてしまうと嫌な気持ちになります。
ケースはFormD T1ですが、小さく、ミニマルでアルミの質感もよく最高です。(ややこしいのですが購入元はNCASEでした)
購入時の合計金額は、約13.3万円。mini-ITXを選んだことでお高めにはなりましたが、メモリ、ストレージなどの容量を抑えたられたのでその部分でコスト圧縮できました。こちらにグラボが入ると軽く20万円を超えてしまうわけで、CG・映像用パソコンにおけるグラボの存在感の大きさを改めて感じますね。
- CPU: Ryzen 5 3400G|10,500円
- CPUファン: NH-L9A-AM4 chromax.black AMD専用クーラー|7,980円
- RAM: Corsair DDR4-2666MHz 8GB x2|6,040円
- マザボ: GIGABYTE B550I AORUS PRO AX|33,414円
- 電源: Silverstone 500W 80Plus Bronze|12,293円
- ケース: FormD T1|31,400円
- ケースファン: Noctua NF-A12x15 PWM chromax.black.swap x2|7,620円
- OS: Windows 11|17,352円
- M.2 SSD: Crucial 500GB|6,060円
パーツが揃ったところでmini-ITXマシンの自作開始
初めてのmini-ITXのパーツ。驚くことに一番下の小さな箱の中にケースが入っています。

ちょっとお高めのマザーボードは、ブラックでデザイン性も高い。パーツが詰め込まれてる感じは好きなんだけど、プリントされている文字が小さく、スペースにも余裕がないためケーブルを差しにくかったりはします。

一体型のバックパネルは高級感があり、USBやLANポートの赤色が黒に映えます。

昨年、初めてマザボにCPUを取り付けたときは失敗への恐怖から緊張しまくりましたが、その経験が生きて今回は平常心で取り付けられました。こういうの慣れてくると逆に失敗したりするので、高級な部品を扱っていることは常に忘れないようにしたいところ。

今回の自作でもっとも苦しめられたのが、M.2 SSDの取り付け。外れなくてはいけないネジが外れないのです。

YouTubeで予習していたものの、極小ネジを外す工具もなく苦戦。最終的には廃材の金物で工具っぽいものを作って外しましたが時間を要しました。YouTubeの情報がなければ状況を把握できなかったと思います。本当に助かりました。ありがとうございます。
CPUファンを取り付けたところ。ロープロファイルということでヒートシンクも薄く、高さも低め。高負荷用途でなければ、これで十分。

メモリを差して、マザボへのパーツ取り付け完了。ぎっしりと詰まったmini-ITXのマザボの小ささよ。透明ケースじゃないので組んでしまったら見ることはないけど、黒でまとまっていて見た目がよい。ちなみに先程のYouTubeによると、M.2のカバーは見た目だけでヒートシンクの役割は果たしていないそう。逆にカバーのせいで熱がこもりそうだけど、冷却機構は備わっているのでメーカーを信じます。

マザボの準備が終わったらケースを組み始めます。金属パーツではありますが、剛性が不安になる細いフレームと薄いカバー。パーツを組み付けたマザボが結構重いので余計に心配。公式サイトからダウンロードしたマニュアルを見ながら組みましたが、ケースのバージョンの方が新しいようでマニュアルと一致しない箇所があって手間取る場面も。

電源を取り付けてケーブルを取り回し。ケースが小さく配線には頭を使います。でも楽しい。

マザボと電源を取り付けたところ。手前側がグラボスペースですが、今回は使わないので余裕があります。なんですが…

ケーブルを取り外せないタイプの電源なので、余ったケーブルは束ねてこのスペースに収納。なかったらスッキリするんだけど見えなくなる部分なのでグッと我慢。将来、グラボを取り付けるなら500Wでは足りないのでそのときに交換します。

反対側から見たところ、このミチミチ感がたまりません。下部にはNoctuaのケースファンx2を取り付けました。

背面はバックパネルの文字が上下逆になっていますが、この方向でしか入らないので間違いではありません。バックパネル右側はグラボが無いと大きく穴が空いてしまいます。あと下部の電源ケーブル差し込み口の両横にも穴が空いているので、これらを埋めるためのパーツを設計して3Dプリント(FormDのウェブサイトから一部パーツのstlがダウンロードできました)。グラボの厚み(何スロット使うか)に応じて、マザボの取り付け位置を調整できるような柔軟な構造になっています。
最初はマザボを片側に寄せて取り付けましたが、間違いとわかって位置を中央に取り付け直しました。写真右側が修正後。配置が変わったので3Dプリントパーツも作り直し。

昨年組んだMicro ATXマシンと並べたところ。Acerのケースは33リットルとコンパクトですが、FormD T1は驚異の9.95リットルとさらなる小型っぷりが際立ちます。Acerのケースもデザイン性が高く、質感もよく気に入ってますが床置きにしなくてはいけなくなり、キャスターをつけました。

Micro ATXマシンと比べてもコンパクトさが際立つFormD T1
マザボにはケーブル接続の大きなWIFIアンテナがあり、机に置いて使うのは嫌だなと思ってたんですがマグネット付きと判明。机の下側に取り付けてある金属製のケーブルボックスに貼り付けられました。目立たずよい感じです。

WIFIアンテナはケーブルボックスに貼り付け
グラボ無しでもオフィス系パソコンとしては快適、使い方次第でCG用としても
今回グラボ無しでもいけると考えたのは、元々使っていたHPのラップトップにもグラボが無かったから。不調になるまではスペック的に問題ありませんでした。同等に見えてもラップトップ用の方がデスクトップ用よりも性能が劣っていたりするし、元々のマシンと比べれば新しいパーツで組んでいるので高性能化できているはず。
結果は狙い通りで、ノーストレスで快適に使えています。Noctua製品は非常に高性能かつ静音で、CPUファンとケースファン は普段はほぼ無音。たまに負荷がかかるとファン音がしますが、長くは続きません。非常に満足な出来となりました。

mini-ITXの極小PCは、スペースに余裕がないため長時間のレンダリングのような高負荷で熱を持ち続ける用途や大容量ストレージを複数搭載するファイルサーバ的な使い方は不向きだと思います。
メモリを128GBまで積めるマザーボードもあるし、ハイエンドなグラフィックボードも搭載は可能ではありますが、現実的にはミドルスペックに留めておくのがコストと性能のバランスがよいのではないでしょうか。ご紹介したVookの記事にあるマシンはまさにそんな感じですね。
mini-ITXのケースは小さく、デザイン性の高い個性的なケースも豊富なので、こだわり強めな方にはお勧めです。
先が見通せないメモリ、SSD、HDDなどの高騰
2025年12月現在、メモリやSSDの価格が高騰しています。昨年10月に1.8万で購入できたDDR4 32GB x2のメモリが、現在は6.2万円と3.4倍以上。そもそもメモリなどに使われる半導体の製造メーカーが限られていることに加え、AI向けデータセンタの旺盛な半導体需要で、製造各社がそちらにリソースを振り向けていたり、メーカーが価格を安定させるために生産量を調整しているなど複合的な要因もあるようです。大容量HDDも必要となるため大手が大量購入しているようで、HDDも価格がジワジワと上がっています。
自作どころかパソコンメーカー全般にも甚大な影響が出そうで、現状ではいつ価格が落ち着くのか先が見通せません。2〜3年は価格が下がらないという見方も。まさかPC自作の話がこんな締めくくりになろうとは、本記事を書き始めたときには予想していませんでした。早く落ち着くことを願うばかり。







